２月のウツ　　

 

一日中家に居て、他に考えることがないから、朝から晩まで、列島周航計画の準備にのめり込んでいる。

横浜に、昨年、わたしと同型のアルビン艇で、日本列島を周ったお方がおられて、氏に、いろいろと教えを請うている。なんでもわかることならお教えしましょうとのお言葉に甘え、８０項目ほど質問事項を羅列し、お願いしまぁ〜す、と、連絡したが、あまりにも低次元の質問が多いのに呆れられたのか、未だに回答がいただけない。わたし、調子に乗りすぎたみたい。呆れを通り越し、お怒りの段階でなければよいが…。

 

でも、不安を自制しようとしても、気がかりなことは、次から次へ数限りなく生まれてくる。それらが各自勝手に成長し、自己増殖するから、始末に困る。

考えれば回答が出て、答案用紙に書けばそれで済むかというと、そういうわけにはいかん。どの回答にも、それ相応の出費という、もっとも困ることがひつこく、くっ付いておる。

当初立てた予算は、既にその半分を使ってしまった。この調子では、いざ出航する際、燃料調達費が残っておらんってことになりそうだ。

 

４０数年間サラリーマンをやってきて、お小遣いは、定期的にかみさんから支給を受けてきた。

油断だった！

このたび全ての仕事から離れ隠居になってみると、定期支給も無くなって、まことに心細い。かみさんが、呆れ顔で「パッパは本当に一銭も持ってないの？」と問うた。

半世紀近くも連れ添いながら、まだワイのことがわかっておらんと、わたしの方もビックリだ。

 

諸事段々と心細くなってきた。今の、この頼りない脆弱な心地のままで、数百マイルもの大海を、黒潮の中を、乗り切ることができるだろうか？
絶対無理だ！

もうやめた方がよくはないか？

気楽に、ひがなコタツにあたって、庭先を眺め暮らしてはどうか？

そもそも、わたしは、冒険できるような者じゃない。性格も体力もぜんぜんそれに似つかわしくない。日陰のモヤシだ。

 

躁鬱（ソウウツ）病というのがあるそうだ。

間違いなく、今、わたしは、ウツの状態にある。

ソウのときは、奄美・沖縄まで、はだしに竹馬履いてでも、のし渡ったる！って、意気込みだった。

が、今は、あの戦艦大和や武蔵ですら、たどり着けなかったのだ、中古艇「はまちどり」ごときが行き着けるはずがない。と、また、落ち込む。

 

今日は上天気。べたなぎ。

ゆりたろうが、「さぁ釣りに行こう」と誘うが、どうにも気が進まない。

これから、気を持ち直して、居間で、メダカと遊ぼうかと思う。

神戸新聞から、コラム原稿を急かされている。２月厳寒期の「メダカ釣り」を書こう。これって、あんがいウツ脱却の特効薬になるかも。